2025年11月について:ダイエットのエビデンス栄養学


1|まず「ダイエット」は“脂肪細胞の生物学”の話である


多くの人がダイエットを「カロリー計算」「運動量の増減」と捉えているが、実際にはもっと多層的で、脂肪細胞(Adipocyte)の生理を理解しなければ正しい介入はできない。


脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、





  • ホルモン分泌(レプチン、アディポネクチン)




  • 免疫調整(炎症性サイトカイン)




  • 神経系との相互作用(迷走神経・視床下部)




といった内分泌器官そのものである。


ゆえにダイエットを語る上では、
「脂肪細胞が“減る"のではなく、“縮む”だけである」
という生物学的前提を持つ必要がある。







2|“痩せる”は代謝の話ではなく、恒常性(Homeostasis)の話である


人が太る・痩せるは単純な数式ではなく、
視床下部を中心とした恒常性(ホメオスタシス)システム
によって強烈に守られている。



●セットポイント理論(Set-point theory)


脳が「あなたの適正体重はここ」と勝手に決めており、
そこから大きくズレると、





  • 代謝を落とす




  • 食欲を上げる




  • 活動量を下げる




  • レプチン感受性を下げる




などの**“自動的な防御反応”**が起きる。


つまり、
痩せにくさは意志ではなく神経生理学の問題である。







3|カロリー理論は正しいが“不十分”である


「摂取<消費で痩せる」これは正しい。
だが、指導者が知っておくべきなのは、
この式が**生物学的には“最後の結果”**に過ぎないという点だ。


カロリー収支は以下の影響を受ける:



●①NEAT


姿勢維持・小さな身体活動
→肥満者では自動的に低下する(脳の防御反応)



●②腸内環境


同じ量の食事でも吸収効率が異なる
→Firmicutes比率が高いと吸収効率↑



●③甲状腺ホルモン


代謝率を数十%単位で変化させる



●④筋量・ミトコンドリア


筋の質(ミトコンドリア密度)がBMRに大きく影響



●⑤ストレス・睡眠


コルチゾール上昇 → 内臓脂肪蓄積 → 代謝低下


結論:
「痩せる=カロリー至上主義」ではなく「痩せる=システム介入」
という視点に切り替える必要がある。







4|行動科学のエビデンス:脳が“ダイエットを嫌う”理由


ヒトの脳は進化的に、
「飢餓=死」
という環境で長く生きてきた。


そのため、
痩せる=脳にとって脅威
である。







5|運動のエビデンス:筋トレは「消費」ではなく“代謝再設計”である


脂肪減少目的で
「ランニングばかりするのは効率が悪い」。
これは明確なエビデンスがある。



●筋トレの痩身効果は“後発的”である




  • 筋量増加 → BMR上昇




  • ミトコンドリア密度増加 → 脂肪酸酸化↑




  • GLUT-4増加 → インスリン感受性改善




  • 姿勢保持筋の活性 → NEATの自動増加




要するに筋トレは、
「痩せやすい身体システム」を作る行為である。







6|ダイエットにおける神経介入の重要性(運動指導者はここを語れ)


あなたの専門分野を活かすパート。



●①迷走神経(Vagus nerve)


食欲抑制系(副交感)の安定は、
食欲の暴走を抑える。


深呼吸・胸郭可動性・内臓のポジション改善は
迷走神経トーン改善=過食抑制につながる。



●②前頭前野(PFC)


衝動食い・夜食はPFCの疲労が背景。
→ストレス管理、運動、睡眠介入が必須。



●③脳幹・前庭系


姿勢不良 → 呼吸低下 → 自律神経の偏り → 過食につながる


つまり、
姿勢 × 呼吸 × 脳幹の介入はダイエットの前提条件
である。







7|栄養学のエビデンス:食事法は“体質×心理×生活環境”で選べ


一般的に研究で優位性が高い食事法は以下





  • 地中海食




  • 高タンパク食




  • 糖質制限(短期は強い)




  • 1800kcal前後の持続型カロリー制限




だが、最強の食事法は「続けられる食事法」である。


行動科学のメタ分析によれば、
“継続要因”が体重減少成果の70%以上を占める







8|睡眠のエビデンス:睡眠不足は太る“独立した因子”


睡眠不足が2日続くだけで:





  • グレリン上昇




  • レプチン低下




  • 衝動性増加(PFC機能低下)




  • 脂肪酸代謝低下




つまり、
睡眠はカロリー計算より優先される問題である。







9|ストレスとホルモン:コルチゾールは「内臓脂肪ホルモン」


慢性的ストレス → コルチゾール↑
→ 肝臓の糖新生↑
→ インスリン↑
→ 内臓脂肪蓄積


と完全に“太るライン”が形成される。


だからこそ、
**呼吸・瞑想・姿勢改善・感覚入力(手足)**など
自律神経に介入できるトレーナーは価値が高い。







10|結論:ダイエットは“脳・身体・生活”の総合アプローチでしか成立しない


まとめると、ダイエットのエビデンスは以下の10層で成り立つ:





  1. カロリー収支




  2. 内分泌(レプチン・甲状腺・インスリン)




  3. 脂肪細胞の生物学




  4. ホメオスタシス(セットポイント)




  5. 食行動の神経学




  6. 腸内環境




  7. 運動(筋トレ・NEAT・ミトコンドリア)




  8. 睡眠




  9. ストレス(コルチゾール)




  10. 姿勢・呼吸・迷走神経




つまり、
ダイエットは“脳 × 解剖学 × 生理学 × 行動変容”の複合領域である。

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