2025年9月更新:トランス脂肪酸の分子栄養学



✅ トランス脂肪酸とは何か?

トランス脂肪酸(TFA)は、脂肪酸の構造中に**「トランス型(二重結合の水素が反対側)」**の構造をもつ不飽和脂肪酸。

自然界にも微量存在(牛・羊の乳製品など)するが、**主に工業的水素添加(部分水素化)**で生成される。

マーガリン、ショートニング、加工菓子、ファストフードなどに多く含まれる。

✅ 分子栄養学的視点:TFAが細胞に与える影響

細胞膜の流動性低下

トランス脂肪酸が細胞膜リン脂質に取り込まれると、細胞膜が硬化し、受容体や輸送体の機能低下を招く。

ホルモン感受性の低下

特にインスリン受容体の感受性低下を誘発し、インスリン抵抗性の一因となる。

核内受容体(PPAR)への干渉

脂肪酸は転写因子PPARを活性化するが、TFAは正常な脂肪酸代謝シグナルを撹乱する可能性がある。

ミトコンドリア機能の低下

エネルギー産生に関わるミトコンドリア膜にも影響を与え、ATP産生効率を低下させる。

✅ 炎症・疾患リスクとの関連(エビデンス多数)

慢性炎症の誘発

TFA摂取でCRP(C反応性タンパク)上昇などの炎症マーカーが増加。

心血管疾患(CVD)リスク上昇

LDLコレステロール↑、HDLコレステロール↓、血管内皮機能↓。

インスリン抵抗性・糖尿病

血糖調整ホルモンへの影響、脂肪肝の促進など複合的に関与。

うつ病・神経疾患

脳神経細胞膜の脂質バランスを崩し、BDNF(脳由来神経栄養因子)低下を誘発する可能性。

発達障害や妊娠期の影響

胎児の神経発達に必要なDHAなどの取り込みを阻害するリスク。

✅ TFAの代謝経路と蓄積傾向

β酸化の効率が悪い

シス型脂肪酸に比べて分解されにくく、体内に長く残存する。

肝臓や脂肪組織に蓄積

特に内臓脂肪として蓄積しやすく、脂肪肝との関連も指摘。

✅ サプリメントとTFA:避けるべき添加脂質

一部の安価なサプリメント・プロテインバーには、**水素添加油脂(partially hydrogenated oils)**が含まれることがある。

分子栄養学的なサプリ評価基準

使用されているキャリアオイルがMCTオイルやオリーブオイルなどの良質なものか確認。

**「トランス脂肪酸フリー」「non-hydrogenated」**などの記載をチェック。

✅ トランス脂肪酸の摂取基準(世界的な動向)

WHO:1日のエネルギー摂取量の1%未満を推奨。

日本では明確な規制はないが、企業の自主規制が進む。

アメリカ・カナダ・EU:食品中のトランス脂肪酸をほぼ全面禁止。

✅ 実践的な回避方法(食事・生活指導)

加工食品の成分表示で**「部分水素添加油脂」**と書かれているものを避ける。

ファストフード・コンビニスナック・安価な焼き菓子類の頻回摂取を控える。

外食では揚げ油の使い回しによるTFA生成にも注意。

良質な脂質(例:EPA、DHA、オリーブオイル、アボカド油など)を意図的に摂取することで、細胞膜のリカバリーを図る。

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